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特定支出控除は、勤務医師のような所得の高い給与所得者の節税策の一つとして知られています(一般的な認知度や利用度はとても低いですが)。
ここでは、制度の概要を簡単にご紹介し、どのような勤務医師が特定支出控除の活用を検討すべきかを解説します。
なお、特定支出控除は給与所得者に適用できる制度であるため、既に開業されている方は活用できません(普通に経費化できるので必要性もないですが)。
特定支出控除とは「勤務医師などの給与所得者が業務に関して支出をした場合に、一定の要件を満たすと所得から控除することができる制度」です。
例えば、給与収入が1,000万円の勤務医師がいたとします。
この勤務医師の所得金額を計算する場合、まずは「給与所得控除(概算経費のようなもの)」が控除されます。
*令和2年以降で、この給与所得控除は850万円を超えると195万円となります。
所得金額計算上、給与収入の1,000万円から給与所得控除195万円を控除し、更に社会保険料などの所得控除を適用した後の課税所得金額に所得税率を乗じて所得税額が確定していきます。
特定支出控除は、上記のうち「給与所得控除額(上述の195万円)を増やすことができる制度」となります。
具体的には、以下の金額を給与所得控除に追加することが出来ます。
1.以下の支出の合計額(職場で負担してもらったものは除きます)
(1)通勤費
(2)転居費
(3)研修費
(4)資格取得費
(5)帰宅旅費
(6)勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費等)*上限65万円
2.給与所得控除×1/2
上記事例では195万円×1/2=97.5万円
3.1.ー2.
例えば1.の合計額が100万円ならば、100-97.5=2.5万円
2018年に特定支出控除を活用した納税者は1,704人だそうです。
納税者数は700万人程度いると考えると、活用している納税者はごくごく少数派ということになります。
このように、制度の利用者が少ないのは以下の理由によるものと思われます。
1.勤務先から証明書をもらう必要がある
特定支出として申告する内容や金額について、職場から証明書(所定の様式あり)をもらう必要があります。
職場からすると、勤務医師個人の支出について業務上必要であることを証明することになります。
支出の妥当性について理解を得るのは簡単ではなさそうです(本当に必要なら職場で負担してくれても・・)
更に、病院の事務員もほとんどが特定支出の申請を受けた経験がないと思います。
よって、保守的な判断となりがちで決裁を得るのは容易ではない・時間がかかるということになります。
2.使い勝手の良い勤務必要経費の上限が65万円である
運よく証明書を発行してくれる勤務先に巡り合えたとして、次の関門は「勤務必要経費の上限65万円」になる場合が多いです。
比較的自由度の高い「図書」や「飲食」については、「衣服」とあわせて65万円という厳しい上限規制が設けられております。
勤務医師の場合、65万円では給与所得控除の1/2に達しない場合がほとんどです。
よって、勤務医師で特定支出控除を活用できるのは、勤務必要経費以外で一定額以上の支出のある場合のみとなります。
3.適用金額が小さい
所得控除額の1/2を超えた部分の支出が対象となるので、多くの勤務医師の場合、100万円程度特定支出をしてやっと節税効果が0ではなくなります。
職場に必要だけど負担はしてもらえない支出が年100万円以上発生する職場ってどうなのでしょうか。
特定支出控除よりも先に転職を検討した方が良いのかもしれませんね・・。
4.活用を勧めてくれる人がいない
特定支出控除の適用について、多忙な業務の合間に勤務医師自らが検討し実行するのは難しいと思われます。
では勤務医師で顧問税理士に確定申告を依頼している場合はどうでしょうか?
結論から言うと、顧問税理士に相談しても、制度を活用できるケースは少ないと思われます。
理由は、
①顧問税理士自体も特定支出控除を経験したことが無い場合が多い⇒制度活用に消極的となる。
②職場で証明書を取るという「最大のネック」に対するアドバイスはできない⇒証明書取得方法は勤務医師が考えなければならない
と考えられるからです。
上述の通り、最も活用しやすい支出項目である「勤務必要経費」については、その上限が定められております。
そのため、特定支出控除を活用しやすい医師は以下のようなパターンが考えられます。
1.学会などにたくさん参加する(したい)勤務医師
勤務医師の場合、勤務必要経費に次いで使用しやすく、頻度も高く、かつ職場の証明も得られやすいものは「研修費」
だと考えられます。
学会の参加費やそこに至る交通費などは「研修費」に該当します。
国際学会などは、金額も大きく、かつ職場に負担してもらえる可能性も低くなるので、「国際学会に行く予定がある場合は特定支出控除の適用を検討してみる」と良いかもしれません。
2.単身赴任の勤務医師
やむを得ない事情で単身赴任となった場合の帰省費用は「帰宅旅費」に該当します。
お子さんが小さいなどの理由で頻繁に規制したい場合には特定支出控除の活用を検討しても良いかもしれません。
職場がすべて負担してくれれば良いのですが、実際には回数制限(月1回など)が設けられている場合も多いかと思います。
その場合、上限を超えた分を集計しておくと特定支出控除の適用を受けられるかもしれません。
なお、上記のような形で特定支出控除の適用を検討できるのであれば、勤務必要経費など他の項目に該当する費用も集計しておくと適用額増加につながります。
アクションプランというと大げさですが、勤務医師が特定支出控除を適用するための職場での立ち回り方について検討してみます。
まず、重要なことは「職場で負担してくれるものは特定支出控除の対象とならない」ということです。
そして、「特定支出控除は支出額の一部相当額が節税になる」ということも重要です。
これらから、以下のようなことが言えます。
⇒特定支出控除を適用するより職場に経費として認めてもらった方が良い
これらを踏まえ、アクションプラン(案)は以下の通りとなります。
1.まずは職場で負担してくれないかを交渉する
学会費用などは既に規程があって交渉の余地はないかもしれません。
ですが、上述したように「職場で負担してもらう方が懐に優しい」ので、まずは職場に負担してもらえないかを交渉しましょう。
2.次善の提案として特定支出控除の証明を依頼する
制度の内容は院内の誰も理解していない場合がほとんどなので、特定支出控除の概要を説明できるように準備したうえで交渉に臨みましょう。
まずは事務局に依頼するのが筋ですが、事務は保守的な判断から「前例がない」等を理由に証明をしない方向で話を勧めることが予想されます。
その場合、経営者や職場の上席者に相談するなど、粘り強く交渉することも重要です(事務はとても嫌がると思いますが)。
繰り返しになりますが、勤務先で負担してもらう方がメリットが大きいです。
また、特定支出控除は、大まかにいえば「業務上必要だけど職場は出してくれない支出」ということになります。
よって、1.の交渉をすることでこの要件を満たすことが可能となります。
(交渉が成功すればもっとラッキーです)
私自身は勤務医師ではないので実際にやってみたことはないのですが、医療機関に勤務した経験上は、上述のやり方で証明書を発行してもらえる確率が増加するのではないかと思っております。
代表税理士 加藤 二郎(かとう じろう)です。お問い合わせをお待ちしております。
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